近年地震など天災に備える保険が注目されています。
地震保険を知る
地震保険とは
地震保険は民間の保険会社と国が共同で運営している公共性の高い保険です。近年起きたような大規模な地震が発生した場合、保険会社だけでは補償しきれない損害が出る場合もあります。その場合、政府が変わって保険金を払う仕組みとなっています。
地震保険は「被災者の生活の安定」を目的としています。そのため、建物や家財の損害額すべてを補償するものではありません。地震後の生活を立て直すための資金、として捉えられています。
補償対象
地震保険は、地震、噴火またそれらによる津波を原因とする災害に対して保険金が支払われます。
原因とする災害は「火災・損壊・埋没・流失」の4つです。通常、地震保険単独では加入することは出来ません。火災保険とセットで契約する形が必要です。すでに火災保険に加入している場合は、地震保険を付加することも可能です。
建物:住居用建物が対象
住居用建物とは、住居のみに使用される建物および併用住宅のこと。
住宅ローンを利用している場合、地震被害によって家を建て直す必要がある場合もでてきます。その際に、地震前の住宅ローン+建て直す際の住宅ローンと2つのローンを抱えてしまうことも。そのような場合、地震保険は被災後の住宅ローンの負担を軽減してくれます。
家財:住居用建物にある家財が対象
地震保険金額は最大で火災保険金額の50%までの設定と決まっているため、「建物のみ」の地震保険では生活再建の費用として足りない場合もあります。例えば、地震により建物と家財が全損した場合、建物の地震保険金にプラスして、家財の地震保険金も受け取ることが出来ます。
ポイント
火災保険:地震による火災は火災保険の対象外!
火災保険は火災、自然災害等で損害を受けたビルやマンションなどの「建物」や、建物の中にある家具や什器などの「動産」(保険の対象)を補償するものです。しかし、地震・噴火またはそれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失などの損害は補償されません。
「保険の対象」ごとに加入する仕組みになっているのが火災保険です。そのため、「建物」だけに保険をかけた場合は、建物が受けた被害分のみとなります。例えば火事で家が燃えてしまった場合、「建物」への保険金は受け取れますが、「動産」に対する保険金は受け取ることが出来ません。
火災保険で補償される事故は、火災のみではなく
●落雷・・・例:雷が落ちて家電がショートした
●水漏れ・・・例:給排水設備の故障により部屋が浸水、マンションの上階からの水漏れにより部屋が浸水
●衝突・・・例:野球ボールが飛んできて窓ガラスが割れた、家に来るまで突っ込まれた
●盗難・・・例:泥棒に現金や家電を盗まれた、泥棒に鍵や窓ガラスを壊された
●破裂・爆発:例:もれたガスに印加して爆発が発生した
なども含まれ、組み立て方の火災保険の場合、自分のニーズにあった保険の対象を選ぶことが出来ます。
自分のライフスタイルに合った保険の対象の選び方は、住んでいる建物が持ち家か、賃貸か、でも変わってきます。賃貸住宅に住んでいる場合、建物の火災保険には大家さんが加入している場合が大半ですので、自分で入る保険に「建物」を含める必要はないでしょう。
火災保険は住まいを守る上で大事な保険です。火災に遭う確率は低いかもしれませんが、万が一火災に遭った場合の損失が非常に大きいと言えます。火災は自分の家が出火元である場合と、周りの火災に巻き込まれるケースとがあります。もらい火事が原因の場合、損害賠償があるから、と思いがちですが損害賠償を求めることが出来ないケースもあります。
失火責任法とは?
周りの火災に巻き込まれた場合、必ず損害賠償を求めることができるとは限りません。日本には「失火責任法」という法律があり、他人の家の火事が燃え移ったことで自分の建物や家財に損害が生じた場合でも、その相手に故意や重大な過失がなければ賠償責任を求めることは出来ないと定められています。そのため、もらい火事の場合の建物の立て直しや家財の書い直しの費用は自己負担となります。
一部の火災保険では、地震火災費用保険金として、火災保険金額の数パーセントが地震などによる火災で半焼または全焼した場合に支払われることがありますが、地震保険の補償とは異なるものです。地震保険は火災保険とセットでしか加入できないため、火災保険を検討する際には地震保険も検討してみる必要がありますね。
補償金額の設定
地震保険は、建物、家財とそれぞれ契約します。補償金額は火災保険の保険金額の30~50%の範囲内という決まりがあり、建物は5000万円まで、家財は1000万円までとそれぞれ上限が決まっています。
保険金
地震で損害を受けた場合、保険金は損害の大きさにより支払金額が異なってきます。損害の大きさは、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階に判定されます。この判定は、保険会社に連絡すると、鑑定人などのプロが建物・家財ごとに調査を行います。
修理の見積もりなどは不要で、比較的早く保険金が支払われます。支払われる保険金額は、損害規模と契約金額に応じた金額です。
保険料
保険料は住んでいる都道府県、そして建物の構造により決まります。
また、始期契約により変動します。
●2019年1月1日以降(2020年8月現在)
●2021年1月1日以降
割引制度
一定の条件を満たすと保険料の割引を受けることができます。
1 建築年割引10%:1981年6月1日以降に新築され建物である場合に適用
2 免震建築物割引50%:住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく建物である場合に適用
3 耐震診断割引10%:地方公共団体などによる耐震診断、もしくは耐震改修の結果、改正建築基準法における耐震基準を満たす場合に適用
4 耐震等級割引10%・30%・50%:住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく耐震等級を有している場合に適用
上記のように、保険料の割引を受けることが出来ます。
地震保険料控除
地震保険の保険料は「地震保険控除」の対象となります。そのため、所得税や住民税の控除を受けることが出来ます。
地震保険料控除額
年間支払保険料が
●5万円まで: 所得税〈保険料全額〉 住民税〈保険料の1/2〉
●5万円超: 所得税〈一律5万円〉 住民税〈一律2万5千円〉
長期契約の保険料を一括で支払った場合、保険料総額を契約期間内で割った金額が年間の控除対象となります。
控除対象保険料は、毎年届く「地震保険料控除証明書」をチェックして年末調整や確定申告をおこなう必要があります。
マンションの場合は?
戸建てだけではなく、マンションのための地震保険があります。
1 共用部分の地震保険:玄関ホールや廊下、外壁など
2 専有部分の地震保険:室内、間仕切壁など
「共用部分の地震保険」はマンション管理組合が加入している場合が多いので、マンションの契約内容を確認しておきましょう。
マンション管理組合では、共有部分の修繕に備えて修繕積立金を積み立てています。その積立金が十分に積み立つ前に地震が起こると、マンション住民に負担がかかる場合があります。
そのため、専用部分の地震保険同様に、共有部分の地震保険は必要と言えるでしょう。
入っておきたい地震保険
日本は地震が多く、世界で発生している大きな地震の2割ほどは日本で発生していると言われています。地震が発生すると、建物が倒壊する以外にも、津波などによる住宅損壊など一瞬で家や家財が失われることもあります。家が無くなったとしても、住宅ローンだけが残り支払いを続ける必要がある場合もあります。
今後ありうる大きな地震に備え、万が一地震の被害にあった場合を考えて、地震保険にはぜひ加入しておきたいものです。